
代々木八幡の商店街にイルミネーションがついた。そういえばもうすぐクリスマスだ。日が暮れるともう町中ちかちかと点滅している。
そんなイルミネーション、去年か今年くらいからだろうか、最近とみに鮮やかな青色が目だつようになった気がする。これがちまたで話題の「青色発光ダイオード」だろう。流行なのかなんなのかよくわからないが、やっぱり青が目につく。さっき話した代々木八幡のイルミネーションだって、青だ。
また、青と同じ時期に目につき出したのが、白 LED。白と言っても白熱灯の妙に橙色がかった白でなくて、蛍光灯よりももっと鋭い白色に光る、あれである。
で、今年はこの2色が幅を利かせていて、今まであったような電球の黄色いイルミネーションはあまり見かけなくなったように思うのである。そこであまのじゃくな僕は、みんな電球は嫌なのか? 黄色は嫌いなのか? と思ったのである。
とりあえず、電球と比べたときの LED の利点はというと
こんな物か。
では、中でも青白 LED を多用するのはどうしてなのか。
逆に電球がよいのは
…… こ れ だ け ?
うーん、巷では消費電力の低い LED がもてはやされているというのに。ねだんもそのうち下がるだろうし、電球の圧倒的不利ではないか。このまま電球はなくなるのか?<./p>
いや、それはちょっと寂しい。たとえ電球がエネルギー的にものすごく効率が悪くても、生き残る道はないものか。だいたい、冬なのにあんな青白い寒そうな光で一面照らされたら、それこそ凍えてしまうじゃないか。
しかし、LED の光って言うのはどうしてああも寒そうな色をしているのだろう。下手すると蛍光灯やネオン管よりも寒く見える。誰もいない夜中の公園を煌煌と照らす水銀灯並みに寒い。青や白だけではない。赤だって黄色だって、やっぱりなんか寒いじゃないか。黄緑だけはそうでもないが、黄緑ベースの電飾ってなんかちょっと…。
閑話休題。LED が寒い話だったが、おそらく色の問題だろう。ひとはどうしてで赤色に暖かさを感じ、青に冷たさを感じるかと言うと、赤が火の色、太陽の色で、青が水の色、夜空の色であることに由来すると思われる。
とりあえず、太陽光や炎の色、電球の色に共通するのはそれが数千度の熱放射の光。一方で LED や蛍光灯、水銀灯の光は基本的に電子準位とか振動準位とかが云々という光なので、連続スペクトルとか輝線スペクトルとかその辺が関係しているんじゃないか、と思い調べてみた。
まず、電球のフィラメントの温度はだいたい 2800 〜 3000 K というところらしい。ちょうど手元に 2000, 4000, 6000 K の黒体放射のスペクトルのグラフがあるのでそこから推測すると 3000 K におけるピークは 0.7 eV かそのあたりと見られる。波長に直すと 3 μm ちょっとってとこか。ばりばり赤外領域である。こりゃ暖かいわけだ。可視光はだいたい 2 〜 5 eV(400 〜 700 nm)付近なので、我々が目に見えているのは短波長側に減衰して行く部分となる。つまり、電球の可視光領域のスペクトルは赤から紫へ単調に漸減して行く感じになるということだ。ちなみに太陽はどうなるかというと、6000 K と考えるとピークが 1.5 eV 弱、これはまだ可視光に近いがやっぱり赤外であることは変わりないので、電球と似た感じになるだろう(もちろん、強さは桁違いに違うが)。
で、電球のイルミネーションというのはこれを塗料でこしているわけだから、必然的に長波長側が強くなり、短波長成分は期待できない、というわけだな。
続いて発光ダイオード。これの発光の原理というのは半導体の電子準位のバンドのエネルギーギャップを電子が落ちて行くときに光を出す、ということに集約されそうだ。が、これだけじゃスペクトルはわからん。まあいいや調べてみよう。
cf. http://en.wikipedia.org/wiki/Light-emitting_diode
……
意外と幅広いな。普通の物質の吸収スペクトルに似ている。これじゃ輝線とは呼べん。まあよくよく考えると、別に単原子気体の作用じゃなくて不純物を含んだシリコンの結晶なんだから、エネルギー準位も電子振動回転(?)共々無数にあるわけで、こうなるのも当然っちゃ当然か。
……
ああ、でも、電球や太陽の光に比べるとだいぶ帯域が限定されてくるのは確かみたいだ。太陽光や電球の光を分光してみると可視光のほぼ全領域の光を含んでいる。塗料でその一部を吸収したって残る帯域は結構あるだろう。一方、LED の光は可視光域の一部、比較的狭い領域しか含んでいないようだ。うーん。こういう光は熱放射じゃあまり出ないだろうなあ。自然界にあるのは蛍の光みたいな化学発光とかホタル石の燐光ってとこか……あまり暖かそうじゃ無いね。
ついでに蛍光灯はどんなかんじかというと、あれは水銀ランプに蛍光塗料を塗った物。だから、各色の蛍光体の発色+水銀の輝線が見えるらしい。で、調べてみるとこの蛍光体というのがくせ者で、なんかタイプによってその蛍光体のまるで発色が違う。大きく分けて、従来からあるハロリン酸塩タイプと比較的新しい希土類タイプ(三波長型)があるらしい。ハロリン酸塩の方は緑〜青にかけての連続的な蛍光、三波長型はかなり鋭い、輝線と言ってもよいような蛍光を発している。
cf. http://en.wikipedia.org/Fluorescent_lamp
うむ、こいつと LED の違いは何だろうか。とりあえず、単色 LED との違いは波長のバラエティだろう。白色は……うーん、蛍光体を使って色みを調節しているという点では蛍光灯も LED も一緒だしなあ。白色 LED は三波長型蛍光灯と違って低周波領域が弱い、けどハロリン酸塩のほうとはあまり変わらない気がする。で、最近は LED でも蛍光体も工夫して赤を多く含むようにしたものもでき始めているらしい。こりゃますます蛍光灯と違いが無いな。いや、「蛍光灯の方がピークが鋭い」という指摘もあるけど今回は「LED は電球や蛍光灯より冷たく感じる」と主張したいわけで……。
要するに、スペクトルからは寒い理由が考えられない、と。ということは理由はもっと別のところにあるはずだ。「蛍光灯は触ると熱い」LED も発熱するらしい。「蛍光灯の方が光る面積が大きいから発熱量も大きい」これはもっともに聞こえるけどなんか本質的でない気がする。というか光る面積の違いが冷たさの違いなんじゃないか。つまり「蛍光灯は面で光るが、LDE は基本的に点で光る」ということ。確かに、点光源というのは夜の星空を連想させる。また、やっぱり小さな光の点よりも大きく輝いている方が頼りがいがあるだろう。というわけでこれだなきっと。
だけど、点光源・面光源を考えると裸電球なんかはどっちかといえば点光源だと思うんだよね。だいたいイルミネーションで面光源はありえないし。
思うに、電球の「暖かさ」というのは色やスペクトルだけじゃなくてもっといろいろな電球特有の性質があっての物なのかもしれない。例えば、電流を通してもパッとすぐには明るくならずに、ちょっと時間をかけてボウッというかんじで点灯することとか(というかそれくらいしか思い浮かばんけど)。
とりあえずざっとこんなもんですか。黒体放射とか持ち出してがんばった割には大したことの無い結論になった。もっと詳しく調べるにはきっと生物学や心理学みたいな知識も必要になるんだろう。
で、やっぱりみんな青だけじゃ寒いと思ったのか、よくよく観察してみると結構白熱電球の光源と併用している人がいるみたいだ。代々木八幡のイルミネーションもよく見るとメインは電球みたいだし。
でも、調べてて知ったんだが最近じゃ肉眼では殆ど電球と見分けのつかない発光ダイオードもできてきているらしい。ますます電球の肩身が狭くなって行くのかなあ。
ついでに蛍光灯についても調べちゃったけど、蛍光灯って実は欧米の家庭ではまるで人気がないんだよね(といっても私が知っているのは英国だけだけど)。家の照明の全部が全部、例外なく白熱灯だったから驚いた記憶がある。まあ、あそこはみんな古い物を大事にするし、温水暖房が建物備え付けの標準装備、っていう土地だからねえ。でもまあもう10年も前の話だから今はどうなってるか知らん。